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遺産分割をする際、相続人が話し合い円満に解決できることが望ましいですが、必ずしも円満にはならないというのもまた現実です。
民法では「法定相続分」という規定があり、「このような割合で分けるのが良い」という割合を定めています。
相続人間での話し合いで折り合いがつかない場合の手段としては、この法定相続分で分割するというのも一つの方法と言えます。
しかし、相続人の中には「それでは納得がいかない」と言う方もいるでしょう。
例えば、被相続人(A)の法定相続人が妻(B)と長男(C)、二男(D)、長女(E)の4人と言う事例で考えてみましょう。
被相続人(A)は事業を営んでおり、長男(C)とがその後継者として共に事業を手伝い、その妻(F)もまた事業に従事していました。二男(C)は実家を離れサラリーマンをしており、長女(E)は結婚をしてOLをしていたとします。
法定相続分は、
・妻(B):1/2
・長男(C):1/6
・二男(D):1/6
・長女(E):1/6
となりますので、仮に相続財産が6,000万円だった場合、各人の相続額は、
・妻(B):3,000万円
・長男(C):1,000万円
・二男(D):1,000万円
・長女(E):1,000万円
となります。
しかし、これは確かに公平な分割のように感じますが、長男(C)にとっては納得がいかないということになるケースも多いでしょう。
それは、被相続人(A)の財産の一部は長男(C)が汗水たらして働いたからこそ形成された財産ということができるからです。そこで、この長男(C)の貢献度を勘案して法定相続分よりも多くの財産を取得できるようにさせるのが「寄与分」の制度です。
寄与分が認められるのは『被相続人の事業に関する労務の提供または財産の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持または増加につき特別に寄与をした共同相続人』と規定されています。
上記の例の場合、長男がほとんど無給で事業を手伝っていたという場合や店舗や社屋の増改築や修繕などに資金を提供していた場合などが「寄与分」と認められます。
また、長女(E)が勤めていた会社を辞めて故人の療養看護や介護のために尽くしたといった場合にも「寄与分」が認められます。
但し、「寄与分」は相続人にのみ認められるものであり、嫁である長男の妻(F)が会社を辞めて故人の療養看護や介護をしたとしても「寄与分」は認められません。また、妻(B)に関しては夫(A)の療養看護に努めるのは当然の義務という判断になるため「寄与分」は認められません。
では、寄与分が認められた場合の相続分の計算方法について見てみましょう。
計算式としては、
・寄与者の相続額=(相続開始時の財産価格−寄与分の価格)×相続分+寄与分の価格
・寄与者以外の人=(相続開始時の財産価格−寄与分の価格)×相続分
となります。
例えば、上記の事例で長男(C)の寄与分が500万円、長女(E)の寄与分が100万円と認められた場合の各人の相続額は下記のようになります。
・妻(B) : (6,000万円−600万円)×1/2=2,700万円
・長男(C) : (6,000万円−600万円)×1/6+500万円=1,400万円
・二男(D) : (6,000万円−600万円)×1/6=900万円
・長女(E) : (6,000万円−600万円)×1/6+100万円=1,000万円
寄与分の金額を決めるのは、原則として相続人間の協議となります。話し合いによって寄与分を決め、各人が納得するということが大切ですが、話し合いでまとまらない場合には家庭裁判所に調停の申立てをすることになります。また、調停でも話し合いがまとまらない場合には「審判」となります。
但し、寄与分の審判は遺産分割をするための前提問題となりますので、事前に「遺産分割審判の申立」が成されていなければなりません。
既述の通り、寄与分は相続人間の話し合いか家庭裁判所の調停、審判によって決まるものであるため遺言によって寄与分を定めることはできません。
例えば遺言で「長男(C)に対して寄与分として1,000万円を与える」とか、「長男(C)に対して寄与分として自宅を与える」と記載していたとしても、その効力はありません。また逆に「寄与分を一切認めない」といった記載にも効力がありません。
但し、寄与分を指定するという効力はないにしても、上記の遺言がその解釈によっては「遺贈」あるいは「相続分の指定」として有効な場合もあります。
遺言を作成する場合には「寄与分として」という文言を使わないことが、後々のトラブル防止になると言えるでしょう。
寄与分に関して話し合いがうまくいかないケースの多くは、特別受益や遺留分などの問題が複雑に絡み合うので、弁護士などの専門家を交えた中で解決することが望ましいでしょう。 |
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