【1.相続の基礎知識】 -43.相続人が誰もいない場合 |
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「相続人が誰もいない」ということには2つの意味があります。
一つは、戸籍上相続人となる人が誰もいないという場合です。例えば、婚姻せず、子どももおらず、両親も既になくなり、兄弟もいない(あるいは既に亡くなり代襲相続人もいない)といった場合です。
そしてもう一つは、戸籍上では相続人はいるけれど全員が相続放棄をしたり、相続欠格あるいは排除されているため、相続する人がいないといった場合です。
仮に従兄弟(いとこ)などといった、いわゆる“遠い親戚”がいたとしても、遺言が無い限り法定相続人となる第三順位までの血族でない限り相続人になることはできません。
さて、このように相続人がおらず、遺言による受遺者なども全くいないといった場合、故人の財産はどのようになるのでしょうか。
内縁関係の妻や夫などといった「特別縁故者」と呼ばれる方が相続できる場合もありますが、すぐに認められるというわけではありません。(【特別縁故者とは?】のページをご参照ください)
流れとしては、家庭裁判所が財産を管理する人を選任し、相続人が本当にいないかどうかを官報で催告し、一定の期間が経っても相続人が現れない場合に初めて「相続人がいない」ということが確定するのです。これを「相続人の不存在」と言います。また、官報の催告によって故人の債権者などが名乗り出た場合には、相続財産の中から弁済されます。
上記の一連の流れをまとめると下記のようになります。
≪相続人不存在確定までの流れ≫
◆利害関係人又は検察官が家庭裁判所に「相続財産管理人選任の請求」を申立てる
↓ ※利害関係人とは、債権者・受遺者・特別縁故者などとなります
◆相続財産管理人の選任の公告(官報に掲載)
↓ ※財産管理人を選任してことが公告される(2ヶ月間)
↓ ※この期間に相続人が現れた場合は通常の相続手続に移行します
◆債権者・受遺者に対する請求申出の公告(2ヶ月間)(官報に掲載)
↓ ※債権者や受遺者は「自分が債権者(受遺者)である」ことを申し出る
↓ ※公告期間が経過したら、相続財産から債権者→受遺者の順に弁済する
◆相続人捜索の公告(相続権主張の催告)(官報に掲載)
↓ ※再度相続人がいないかを公告する(6ヶ月以上)
↓ ※上記の債権者等への弁済(相続財産の精算)と並行して行われます
↓ ※この公告は、精算によって既に相続財産が存在しない場合には行われません
↓ ※残余財産がある場合に限り、後から名乗り出た債権者等にも弁済されます
◆相続人不存在の確定 ※上記6ヶ月以上の期間を経過した場合
↓ ※相続人不存在の確定以降申し出た債権者や受遺者はその権利がありません
◆特別縁故者による財産分与の申立(上記公告期間満了から3ヶ月以内)
↓ ※特別縁故者については【特別縁故者とは?】のページを参照して下さい
◆国庫に帰属 ※特別縁故者による申立てがない場合、残余財産は国の物となります
例えば、故人が多額の債務を残して亡くなったような場合、多少の預金等があっても相続人が「相続放棄」するような場合があるでしょう。
債権者にとっては、プラスの財産があるのであれば債権の一部であっても弁済してもらいたいと考えるのは当然のことですので、家庭裁判所に対して「相続財産管理人選任の請求」をします。
但し、債権額が少ない場合などは債権者にとっての手間と費用を考慮した上での判断となるのが現実と言えるでしょう。 |
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■参考資料 |
日本では年間約110万人位の方が死亡しています。つまり、年間約110万件の相続が開始されているということになります。(ちなみに北海道の死亡者数は約5万数千人です)
この内、相続人不存在となっているのは平成22年で14,069件です。また、この中で特別縁故者に相続財産が分与されたのは935件となっています。
つまり、差し引き13,134件については相続人も特別縁故者もなく相続財産が国庫に帰属したということになります。この国庫に帰属した財産の額は約261億7300万円で、1件当たりにすると平均約200万円弱となっています。
相続人不存在の件数、国庫帰属額等の推移は下表のようになっています。 |
年 |
平成15年 |
平成16年 |
平成17年 |
平成18年 |
平成19年 |
平成20年 |
平成21年 |
平成22年 |
死亡者数(千人) |
1.010 |
1,030 |
1,080 |
1,080 |
1,110 |
1,140 |
1,140 |
1,181 |
相続人不存在(件) |
9,240 |
10,330 |
10,736 |
11,689 |
11,620 |
12,382 |
12,883 |
14,069 |
特別縁故者(件) |
771 |
798 |
822 |
868 |
932 |
913 |
952 |
935 |
差し引き数(件) |
8,473 |
9,532 |
9,914 |
10,821 |
10,688 |
11,469 |
11,931 |
13,134 |
国庫帰属額(百万円) |
14,595 |
15,456 |
16,790 |
22,426 |
22,960 |
22,257 |
28,117 |
26,173 |
国庫帰属率(%) |
0.84% |
0.93% |
0.92% |
1.00% |
0.96% |
1.01% |
1.05% |
1.11% |
1件当たり金額(円) |
1,722.530 |
1,621,486 |
1,693,565 |
2,072,452 |
2,148,204 |
1,931,903 |
1,518,481 |
1,992,767 |
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上の表からも分かる通り、相続人不存在の確定数や国庫に帰属された財産額は多少の増減はあるものの、ここ数年右肩上がりの傾向と言えるでしょう。
少子化により法定相続人となる方の人数が少ないということや、不景気の影響による債務過多での相続放棄が多いことなども原因の一つと言えるかもしれません。
最終的に相続財産が国のものとなってしまう国庫帰属率は1%前後で推移していますので、100人に1人の割合で相続人が誰もいないということになります。 |
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■官報に記載される公告・催告 |
日常的に官報をご覧になる方はほとんどいないと思いますが、実際には下記のように公告や催告等が掲載されます。尚、官報はインターネットで全て閲覧することが可能です |
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◆相続財産管理人の選任 |
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◆債権者・受遺者に対する請求申出の催告 |
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◆相続権主張の催告 |
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