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「不在者財産管理人の選任」は不在者が生存していることを前提として、その財産を管理する者を選任する手続であるのに対して、「失踪宣告」は不在者が既に死亡していることを前提とする手続になります。
失踪宣告の申立てができるのは、通常に生活していて7年以上生死が不明の場合(普通失踪)か、若しくは事故や災害等に遭遇し、その後1年以上生死が不明な場合(危難失踪)のみとなります。
遺産分割は相続人全員の同意がなければ行うことができませんので、相続人の中に行方不明者がいる場合には「失踪宣告」の審判により、不在者が死亡しているという前提に立って遺産分割協議を行います。
失踪宣告の申立てや遺産分割の流れと必要書類等は下記の通りです。
≪失踪宣告と遺産分割の流れ≫
◆必要書類の取寄せ
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◆申立書の作成と家庭裁判所への提出
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◆家庭裁判所からの呼び出し
↓ ※申立人と管理人候補者が家庭裁判所で事情を説明します
◆家庭裁判所による調査
↓ ※職権により運転免許の照会、雇用保険の照会などが行われます
↓ ※この調査で所在が明らかになる場合もあります
◆公示催告(官報に掲載)
↓ ※6ヶ月以上(危難失踪の場合は2ヶ月以上)官報などに掲載
◆失踪宣告(官報に掲載)
↓ ※審判の確定証明書と審判謄本を申請
◆遺産分割協議
↓ ※不在者が既に死亡しているという前提で遺産分割を行います
≪申立てをするところ≫
・不在者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
≪申立てに必要な書類≫ ※下記は標準的な必要書類です
・申立書
・不在者の戸籍謄本(全部事項証明書)
・不在者の戸籍附票
・失踪を証する資料(※1)
・申立人の利害関係を証する資料(親族関係であれば戸籍謄本(全部事項証明書))
(※1)警察に捜索願を出している場合には「捜索願受理証明書」あるいは「返送された不在者宛の郵便物」などが「不在の事実を証する資料」となります。
※必要に応じてその他の書類を裁判所から求められる場合があります。
≪申立てに必要な費用≫
・収入印紙 800円分
・郵便切手 2000円(札幌家庭裁判所の場合) ※各家庭裁判所に確認して下さい
・収入印紙(登記用) 4179円分
※司法書士に依頼した場合には別途司法書士報酬が必要になります。 |
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失踪が宣告された場合、申立人には戸籍法による届出の義務があり、審判確定から10日以内に「失踪届」を提出しなければなりません。
届出は失踪者の本籍地か申立人の住所地の市区町村役場です。また届出の際には「審判謄本」と「確定証明書」が必要になりますので、審判をした家庭裁判所で申請して下さい。尚、届出の際に戸籍謄本などが必要な場合がありますので、市区町村役場にご確認下さい。
失踪が宣告されると、行方不明者は死亡したこととして扱われますので、配偶者は再婚することが可能になります。また、不明者を除いた相続人によって遺産分割をすることも可能です。
但し、失踪宣告された人が生存していた場合には、届出によって戸籍は復活します。配偶者が再婚していた場合にはその婚姻が無効になることはありません。
相続された財産については、基本的には相続分に応じて返還されることになりますが、既に消費してしまった分や、処分してしまった不動産については返還しなくてもよいことになっています。 |
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失踪宣告によって相続をする場合には、不明者本人の相続も同時に発生します。
下図の例の場合、次男が行方不明で遺産分割ができないため失踪宣告の申立てを行ったとします。
失踪が宣告されると、【相続1】として、配偶者、長男、長女を相続人とする遺産分割が可能になりますが、同時に行方不明者である次男を被相続人とした【相続2】が発生することになります。
【相続2】に関しては配偶者(行方不明者の母)が単独相続することになります。 |
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■失踪宣告の取消について |
失踪宣告をされた人が生存していた場合や、失踪宣告によって死亡したとみなされた時とは異なる時に死亡したことが明らかになった場合には、申立てによって失踪宣告が取り消されます。
申立てをするのは、失踪者本人か利害関係人となり、本人が生存していた場合には住所地の家庭裁判所、死亡時期が異なっていた場合には失踪宣告をした家庭裁判所となります。尚、失踪宣告が取り消されると、官報に記載されます。 |
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一般の方が「官報」を見ることはほとんどないと思いますが、失踪に関する催告は官報では下のように記載されます。尚、官報はインタネットで誰でも閲覧することが可能です。 |
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◆失踪に関する届出の催告 |
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◆失踪宣告 |
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◆失踪宣告の取消 |
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