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「遺産分割協議書」とは、相続する財産の分割内容について記載した上で相続人全員が署名捺印した書類のことを言います。
相続をする際に必ず作成しなければならないというものではありませんが、不動産の名義変更登記をする際や相続税の申告が必要な場合には必ず必要となりますし、その他の名義変更手続き等においても、遺産分割協議書があると手続きがスムーズに行く場合があります。
遺産分割協議書は、相続の内容を記録した大切な資料となりますので、後々になってからのトラブルを避けるためにも、「遺産分割協議書」を作成しておくことをおすすめします。
遺産分割協議書には決まった書式や様式はありませんし、期限もありません。(但し、相続税の申告がある場合には10ヶ月以内という期限があり、それまでに遺産分割協議が整わない場合には、様々な控除の恩恵を受けられなくなってしまいます)
用紙のサイズはA4、A3、B4等何でも構いませんし、縦書きでも横書きでも大丈夫です。また手書きでもワープロによる作成でもOKです。
但し、相続人全員が分割協議に参加し、記載内容に同意したことを証するために必ず全員の署名と捺印(印鑑登録された実印)が必要になります。
相続人全員が参加と言っても、全ての方が一堂に会する必要はありません。実際には相続人が遠方にいらっしゃると言うケースも多いですので、電話やメールなどで話し合いをした上で作成した遺産分割協議書をそれぞれ順番に郵送しあって署名と捺印をするといったやり方となることが多いようです。
分割協議が早目に決まれば、四十九日など遺族が多く集まる席で作成することが望ましいと言えるでしょう。 |
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■遺産分割協議書作成の注意点 |
◇預貯金について
金融機関の名称、支店名、口座番号などはできるだけ詳しく記載するようにしましょう。
残高を記載しなくても分割協議書としては有効ですが、トラブルが想定される場合には事前に残高照会をして金額を記載しましょう。
◇不動産について
事前に登記簿謄本(全部事項証明)を取寄せ、謄本に記載されている通りに記入しましょう。
記載に間違いがあった場合、法務局での手続きが進められない場合がありますので十分注意する必要があります。遺産分割協議書に決まった様式はないものの、不動産の表記方法に関しては特に慎重に行うようにしましょう。
◇代償分割について
ある相続人が不動産などの財産を取得するにあたって、その代償として他の相続人に対して金銭を支払う旨を定めた「代償分割」の場合には、代償金額と支払期限を記載しましょう。
◇署名について
遺産分割協議書に記載する住所と氏名欄は自署でなければならないと説明しているページも多数ありますが、必ずしも自署が必須要件というわけではありません。つまり、住所や氏名も含めて全てワープロ打ちしたものであっても遺産分割協議書は有効です。
しかし、金融機関によっては「自署でなければならない」としているところもありますし、後々のトラブルを避けるためにも最低限氏名だけでも自署するようにしておくと良いでしょう。
また、戸籍上の氏名では旧字を使用しているけれど、普段は使っていないという場合には必ず旧字で署名しましょう。
◇捺印について
遺産分割協議書の押印は必ず印鑑登録された実印でなければなりません。認印を押印した遺産分割協議書には効力がありませんので注意しましょう。また、法務局に提出する場合は印鑑証明書に有効期限はありませんが、金融機関などによっては「3ヶ月以内あるいは6ヶ月以内に発行のもの」といった期限がある場合がありますので注意しましょう。
◇記載する住所や氏名について
遺産分割協議書に記入(署名)する住所や氏名については、住民票や印鑑登録証明に記載された表記の通りに記入しましょう。住所表記の「番」や「番地」、あるいは戸籍上の氏名が「邊」「澤」「廣」などといった旧字体を使用している場合には注意しましょう。
◇ページが複数になる場合
遺産分割協議書が1ページで収まらない場合は、用紙をホチキス止めした上で各ページに必ず契印をしなければなりませんので注意しましょう。契印の注意点については【割印・契印・捨印とは?】のページをご参照ください。 |
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◇作成する部数について
遺産分割協議の内容を各相続人が平等に保管する場合には、相続人の人数分作成することが望ましいですが、そうしなければならないと言う決まりはありません。代表する方1名が原本を保管し、その他の方はコピーを保管するという方法でもよろしいですし、コピーすら必要ないといったケースもあるでしょう。それぞれのケースに応じてご対応下さい。
法務局や金融機関に提出する場合、手続き終了後に原本を返却してもらう(原本還付)ことも可能です。但し、はじめからコピーだけを提出しても受け付けてくれませんので注意しましょう。
◇その他の財産が見つかった時のために
一度遺産分割協議が終了したのに、家の整理をしていたら別な通帳が見つかったとか価値のある骨董品や絵画が見つかるということもあります。この場合、改めて遺産分割協議書を作成し直す必要はありませんし、前回作成した遺産分割協議書はそのまま有効となります。
こういったケースに備えるために、遺産分割協議書に記載する文言の中に「後日、新たな遺産が見つかった場合にはどうするのか」という点について記載しておくようにしましょう。
例えば…
『本遺産分割協議の対象にならなかった被相続人の遺産(債権及び債務を含む)が後日確認又は発見された場合は、「別途協議する。」 (あるいは)「相続人山田花子が取得する」』
…などといったように記載しておきましょう。
◇捨印について
下記の遺産分割協議書作成例では右下部に、いわゆる「捨印」を押印しています。法務局などで実際に手続をする際に記載事項に謝りがあった場合、捨印があるとその場で文言の追記修正などをすることが可能なため、事前に押印しておくことを勧める司法書士さんも多いです。
しかし、捨印は「白紙委任」的な意味合いもありますので注意が必要です。捨印の意味や注意点については【割印・契印・捨印とは?】のページをご参照ください。 |
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■遺産分割協議書の作成例 |
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