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相続税の申告をして一安心していると、多くの場合税務署による調査が行われます。税務調査が行われる明確な基準というものは存在しませんが、申告をした方の約3割程度となっているようです。
特に遺産総額3億円以上の場合にはほぼ100%税務調査があると思っていた方が良いという統計もあります。遺産総額が1億円〜3億円の間の場合はギリギリのラインと言えるかもしれません。
各税務署によって相続税の申告件数には大きな開きがありますので、申告数が少ない税務署の場合であれば、遺産総額が少ない場合でも調査が行われる確率は高くなると言えるかもしれません。
日本では毎年約110万人前後の方が亡くなっていますが、その内相続税の申告をされているのは5万人前後で全体の約4.2%ほどとなっています。東京の千代田区、港区、目黒区、渋谷区といった地区の申告率は約20%と非常に高く、逆に北海道などは平均よりも低くなります。
上述の通り、税務調査が実施されるのは全体の30%程度ですが、調査が行われた方の約85%は申告内容について否認され、追加の納税が発生しているという統計もあります。
相続税の調査では、ほとんどの場合「金融資産」をターゲットにして調査が行われると言っても良いでしょう。もちろん不動産等も調査対象ではありますが、よほど無茶な評価減等をしていない限りは不動産が調査対象となることは少ないでしょう。実際に申告漏れと指摘された財産のトップは預貯金なのです。つまり、税務署の調査は完全に預貯金を狙い撃ちしたものとなるのです。
「金融資産」とは、銀行預金や郵便貯金、あるいは保険(特にかんぽ)などが対象となります。
税務署は金融機関に対して絶対的な調査権を持っています。故人名義の預貯金通帳はもちろんのこと、家族名義のものも全て把握します。これは単なる残高だけではなく、過去の資金の流れなども全て把握します。 |
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■預貯金の調査ポイント |
第一は、申告書に記載された口座以外に故人名義の口座がないかどうかを調べます。複数の金融機関に複数の通帳を持っているという方も多いでしょう。この時、「1つや2つくらい申告しなくてもバレないだろう…」などと考えて財産目録から除外しても、税務署から金融機関への照会ですぐにバレてしまいます。
もちろん、口座の存在を知らなかったという場合もあるでしょうが、意図的に除外して申告しなかった場合にはペナルティーがありますので注意しましょう。
第二は「家族名義」の口座です。故人が奥さん名義や子ども名義、あるいは孫の名義で通帳を作っていたということはよくあることと言えます。
『故人名義の通帳ではないのだから、相続財産にはならないだろう…』と判断するのは非常に危険です。税務署が見るのは、その通帳に入れられたお金の出どころです。つまり、元々誰のお金だったのかという点を調査します。
例えば、専業主婦だった奥様名義の口座に5,000万円の預金があったとします。これは、専業主婦である妻が蓄えられる額とは言えません。つまり、元々はご主人のお金であり、相続財産に加えるべきお金であると判断されるのです。「私がやりくりして貯金してきたのだから、私のものです!」とどれだけ頑張っても、認めてくれません。
奥さんの資産であるということを認めてもらうには、例えば奥さんの両親が亡くなった際に相続されたといったことであったり、結婚前から蓄えていたということが証明できなければなりません。
同様に、子どもや孫名義で貯金していた場合なども、相続財産と認定されることが多くなります。年間110万円を毎年通帳に入れてきたといったような場合であれば、贈与税の非課税範囲内での贈与だったことが認められますが、不定期に多額の資金を子どもや孫名義の通帳に入金していた場合などは確実に否認されます。
子どもや孫が既に成人している場合などは、本人が貯金したものなのか、被相続人が貯金したものなのかを判断するのは難しいということもあるでしょう。こういった場合には資産全体の資金の流れも調査されます。
例えば、被相続人名義の通帳から1,000万円引き出された日に、子ども名義の通帳に1,000万円入金されているといった事実が判明すれば、その1,000万円は例え子ども名義の預金であったとしても、相続財産に繰り入れることになります。
また、通帳に使用されている印鑑も調査のポイントとなります。子どもや孫名義の通帳であるにも関わらす、使用されている印鑑がいつも被相続人が使用している印鑑だったというような場合にも、その預貯金は相続財産に認定されるでしょう。
同様に、各人が普段利用している「支店」などもポイントとなります。例えば、被相続人はいつもA支店を利用し、子どもはB支店を利用しているにも関わらず、A支店に子ども名義の預金がある場合などは、調査ターゲットになるケースが多くなるでしょう。 |
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■税務調査の一般的な流れ |
◆税務署からの連絡
↓ ※申告を税理士に依頼していた場合には、税理士にすぐ連絡しましょう
◆調査日程の決定
↓
◆実地調査 通常は自宅において実施されます(1日〜2日程度)
↓ ※調査しきれなかった分を税務署に持ち帰る場合もあります。
◆税務署内での検討
↓ ※指摘事項があった場合には税理士を通じて照会されます。
◆調査終了
※特に問題がなければ、調査は終了します。
※指摘事項があった場合には、修正申告や追加の納税が発生します。
調査当日は、当たり障りのない「世間話し」から始まります。これは、相続人の緊張をほぐすという目的もありますが、世間話の中から故人の趣味や生活状況などを把握するのです。
また、金融機関名の入ったカレンダーなどがある場合、その金融機関の口座が申告財産に含まれているかどうかといったことなども調査するようです。年賀状なども申告漏れ金融機関をチェックする資料となります。
「税理士に頼んだのだから安心」ということはありません。上述の通り、調査対象の実に85%は何らかの指摘を受けて修正申告&追加納税をしているのです。一言で「税理士」と言っても、相続税申告に強い方とそうでない方がいるというのも事実です。毎年の確定申告や会社の税務申告はお願いしていても、その先生が相続税にも強いかどうかという点は別問題となります。
遺産総額が1億円〜3億円を超えるような場合には、相続税に強い税理士に依頼するということも重要です。修正申告が必要になり、追加で税金を納めなければならなくなった場合、本来は当初の申告期限である10ヶ月以内に納付すべき税金ということになります。つまり、修正後の納付額については「延滞」しているということになってしまい、「延滞税」というプラスアルファの支出も発生してしまうので注意が必要です。 |
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