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ある人の相続手続を行う前に、その相続人の誰かが亡くなってしまうということがあります。1回目の相続において相続財産を受取るはずの方が亡くなってしまい、2回目の相続が発生してしまう相続のことを「数次相続」と言います。
例えば、下図のような事例で考えてみましょう。 |
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花子さんが亡くなり相続@が発生しましたが、その相続手続が済まない内に花子さんの夫である太郎さんが亡くなり相続Aが発生しました。太郎さんには離婚した前妻幸子さんとの間に友子さんという長女がいました。この場合、太郎さん名義の不動産について相続登記を行うにはどのようにしなければならないのか、また各人の法定相続分はどのようになるかを考えてみます。 |
≪相続@について≫
・被相続人=太郎さん
・相続人=花子さん(法定相続分1/2)
一郎さん(法定相続分1/4)
次郎さん(法定相続分1/4) |
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≪相続Aについて≫
・被相続人=花子さん
・相続人=一郎さん(法定相続分1/3)
次郎さん(法定相続分1/3)
友子さん(法定相続分1/3) |
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当初、太郎さんが亡くなった際には花子さん、一郎さん、次郎さんの親子間での話し合いによって、長男の一郎さんが太郎さん名義の不動産を相続することとしていました。しかし、その名義変更(所有権移転登記)を行う前に花子さんが亡くなってしまいました。
つまり、花子さんが亡くなった時点では、太郎さん名義の不動産の内1/2については法律上花子さんに所有権があったということになってしまうのです。花子さんを被相続人とする相続Aについては、離婚した耕作さんとの間に生まれた友子さんも相続人となり、一郎さん次郎さんとそれぞれ1/3ずつの法定相続分が存在します。
不動産全体で考えると、花子さんの法定相続分である1/2に対する1/3ということになりますので、友子さんには不動産全体の1/6について所有権があるということになります。この2度の相続について不動産の法定相続分を図示すると下図のような流れになります。 |
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↓花子の持分(全体の1/2)を3人が相続 |
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↓相続@及び相続Aでの各人の持ち分を合算 |
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花子が死亡する前に、一郎への所有権移転登記が完了していた場合には、この不動産に対して友子は相続権が全くありません。しかし、上述のように太郎への名義変更が済んでいない内に花子が死亡した場合には友子にも相続権が発生するのです。
仮に法定相続分で相続する場合には、上記のように太郎5/12、次郎5/12、友子2/12という持分での共有ということになります。この場合には相続@に関する相続登記と相続Aに関する相続登記という2回の登記が必要になります。 |
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■1回の登記で名義変更できる場合 |
上記のように、法定相続分で相続する場合には2回の登記が必要となりますが、話し合い(遺産分割協議)によって太郎が単独で相続するという場合には、相続@に関する登記を省略して1回の登記で太郎への所有権移転が可能です。
この場合、作成する遺産分割協議書も1通で手続可能です。特に様式が定められているわけではありませんので、「誰の死亡」によって、「誰が」「何を相続するのか」ということを分かりやすく記載すれば良いでしょう。上記の例では下記のような記載で遺産分割協議書を作成すれば手続可能です。 |
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遺 産 分 割 協 議 書 |
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被相続人 山田太郎 が、平成○○年○月○日死亡し、また、山田太郎の相続人である山田花子は、
平成××年××月××日死亡したので、その相続人 山田一郎、山田二郎及び鈴木友子は、被相続人の遺産につき次のとおり分割することを協議した。
1. 相続人Cが取得する財産
※不動産の表示
上記のとおり、相続人全員による遺産分割の協議が成立したので、これを証するため本書を作成し、次に各自署名押印する。
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平成▽▽年▽▽月▽▽日 |
住所 北海道○○市○○町○番地
相続人 山田 一郎 印
住所 北海道××市××町×番地
相続人 山田 次郎 印
住所 北海道△△市△△町△番地
相続人 鈴木 友子 印 |
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上記のような例で、仮に友子さんが分割協議に応じないような場合には手続がスムーズに行えなくなってしまうこともあります。また、長期間登記をせずにいると、一郎さんや次郎さん、友子さんが死亡してしまうといったこともあり、そうなると相続人の数が更に増え、それぞれがほとんど面識がないような中で話し合いをしなければならなくなってしまいます。
二代、三代といった数次相続となると、相続人の数が数十人に膨らんでしまうケースもあり、相続人の所在を探すだけでも一苦労となります。できるだけ早い内に名義変更することが大切です。 |
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