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【3.戸籍の基礎知識】 -4.戸籍に関わる用語集(旧規定) |
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戸籍の中には普段の生活の中ではあまり聞きなれない言葉も多数あります。特に明治〜大正、昭和初期の時代の戸籍法によって作成された旧様式の戸籍には、現在では使われていない用語も多く含まれています。
ここでは、旧式の戸籍に関わる様々な用語についてまとめてみましたので、戸籍を読み取る上での参考にして頂ければ幸いです。
◆家制度とは
「戸主」と「家族」から構成される単位を「家」と言い、戸主はその「家」の統率者であり、戸主以外の者が家族となります。一つの「家」は一つの戸籍に登録され、どの家に属するかは戸籍に記載されているかどうかで判断されます。「父ノ家ニ入ル」は、「父の戸籍に入籍する」という意味であり、また「家ヲ去リタル」は「戸籍から除籍された」といった意味になります。
現在は三代以上の親族が同じ戸籍には記載されない制度となっていますが、家制度の頃は戸主の父母、子どもはもちろん、祖父母や子の妻、孫、兄弟姉妹、甥姪、曾孫など非常に多くの家族が一つの戸籍に記載されていました。
◆戸主(こしゅ)
現行の夫婦単位の戸籍制度と違い、「家」を単位としていた戸籍制度において、一家の代表者のことを「戸主」と呼びます。現在の筆頭者とは違って非常に強い権限があり、戸主の同意を得ずに結婚した者を戸籍から除くことなども可能でした。
一家の代表者のこと。現行戸籍制度の筆頭者と違い、戸主の同意を得ずに結婚した者を戸籍から除くなど、非常に強い権限が与えられていた。
◆女戸主(おんなこしゅ・にょこしゅ・じょこしゅ)
戸主となるのは原則として男性でしたが、女性も家督相続することは可能でした。女性の庶子や私生児などが新たに一家を創立するといった場合もあるので、女性の戸主も存在しました。
女戸主が婚姻して他家に入る場合には、隠居か廃家しなければなりませんでした。また、女戸主が戸主のまま婚姻する場合は入夫婚姻と呼び、夫が入婿となりました。入夫婚姻の場合は夫が戸主となることもできましたし、女戸主がそのまま戸主となることも可能でした。
◆私生子・私生児(しせいじ)
父から認知されていない非嫡出子のこと。
◆庶子(しょし)
父から認知された非嫡出子のこと。
◆入夫婚姻(にゅうふこんいん)
女戸主である女性と婚姻して、夫が妻の戸籍に入る婚姻方法のこと。夫が戸主になることも、そのまま妻が戸主を続けることも可能でした。
◆婿養子縁組(むこようしえんぐみ)
婚姻し、同時に妻の親と養子縁組を行うこと。入夫婚姻は女戸主との婚姻の場合であり、婿養子縁組は女戸主との婚姻に限らず戸主以外の女性とも行うことが可能です。現在でも、妻の父母の養子となってから結婚することを婿養子あるいは入婿と言います。
◆隠居(いんきょ)
現代では第一線から退き、悠々自適の老後を送るといった意味で使われることがありますが、旧民法においては生前に「家督」を相続人へ譲ることを意味します。戦後、日本国憲法の施行により戸主制が廃止されたことによって隠居制度も廃止されました。
旧民法では、戸主に対して「戸主権」という非常に強い権限を与え、家族の統率や監督を行いました。この戸主としての地位を「家督」と言い、家督相続人に対してその権限を承継させる制度が「家督相続」です。隠居とは、家督相続が開始される一つの原因であり、隠居者と家督相続人が共同で届け出ることによって家督相続が開始されました。
隠居には条件があり、満60歳以上であり、完全な能力を有する家督相続人が相続の単純承認をすることです。また、戸主が病気の場合や本家の家督を相続するため現在の家の戸主を務めることができなくなるといった場合には隠居が認められました。
◆家督相続(かとくそうぞく)
戸主としての権限(戸主権)を別の者に承継すること。戸主が死亡したり、隠居した場合また戸主が婚姻して別の戸籍に入った場合や、女戸主が入夫婚姻をして夫に戸主を譲る場合、入夫婚姻して戸主となった夫が離婚によって戸籍を出る場合、戸主が日本国籍を失ったことなどが家督相続の原因となります。
◆離籍(りせき)
戸主には非常に強い権限があり、戸主の同意を得ずに結婚や養子縁組をした家族や、戸主が指定した場所に居住しない家族について、「家」から排除することができました。これを「離籍」と言います。これは戸主に与えられた権限ですが、未成年者や推定家督相続人は離籍することができません。
◆復籍拒絶(ふくせききょぜつ)
戸主の同意を得ずに結婚や養子縁組して他の家に入った場合、その家に対しては戸主の権限が及びません。しかしその後離婚や養子離縁をした場合、通常は元の家に戻る(復籍)ことになりますが、この時元の戸主が復籍を拒絶することが可能でした。復籍を拒絶された場合は、自身が新たに家を創る(一家創立)ことになります。
◆一家創立(いっかそうりつ)
戸主が入籍や復籍を拒絶した場合、入る戸籍がないため新たに「家」をつくることになり、これを一家創立と言います。
◆廃家(はいか・はいけ)
戸主が婚姻や養子縁組などによって家族と一緒に他家に入るため、元の家を消滅させること。但し、一家創立によって戸主となった人は自由に廃家することができましたが、家督相続によって戸主になった場合には廃家するためには裁判所の許可が必要でした。
◆絶家(ぜっか・ぜっけ)
戸主の死亡によって家督相続が開始された場合で、相続人が一人もいないため「家」が消滅すること。廃家は戸主の意思によって行いますが、絶家は不可抗力によって生じることになります。
◆分家(ぶんけ)
ある「家」に属する家族が、その「家」から分離して新たに「家」をつくること。元々属していた家を「本家」と呼び、新たな家を「分家」と呼びます。分家には戸主の同意が必要で、分家する者の妻及び直系卑属及びその妻が新たな家に入ることができました。地域によっては本家のことを母屋、分家のことを新宅と呼ぶこともあります。
◆廃絶家再興(はいぜつけさいこう)
既に廃家や絶家した家を、その縁故者が戸主となって再興すること。しかしこれは元の家の財産や権利を承継する手続ではなく、あくまでも「家名」を残すための手続でしかありません。
※旧民法に規定された用語は、普段の生活においては見聞きすることもほとんどないでしょうし、その意味を知る必要もないかもしれません。しかし、相続手続では、明治〜昭和初期にかけての古い戸籍まで遡る機会も非常に多いため、その戸籍が作られた「始まり」や、その戸籍が閉じられた「終わり」を読み取ることは非常に重要なこととなります。
例えば、「明治○年○月○日前戸主山田彦三郎死亡ニヨリ長男平蔵家督相続届出」などといった記載に出会います。これは「記載の年月日に戸主だった山田彦三郎さんが死亡したため、その長男である山田平蔵さんが家督相続をした」という意味になります。
戸籍の流れを読み取る上では「家督相続」「隠居」「分家」などといった文言は非常に重要なものとなります。 |
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